電子レンジから突然「ボン!」という大きな音がする。
扉の中を見ると、卵や食品が飛び散っていたり、煙や炎が出ていたりすることがあります。
電子レンジは火を直接使わないため、安全な家電という印象があります。しかし、食品の種類、容器、加熱時間、庫内の汚れなどによって、破裂、やけど、発煙、発火、火災につながることがあります。
国民生活センターによると、電子レンジ使用中の発煙、発火、誤使用などに関する相談は、2020年4月から2025年12月までの5年9カ月で521件寄せられています。
事故が多かった食品や原因には、冷凍食品、庫内の汚れ、総菜の容器、卵、さつまいも、レトルト食品、弁当容器などがありました。
電子レンジで特に注意したい事故
- 卵や皮・膜のある食品が破裂する
- 味噌汁やコーヒーが突然噴き出す
- さつまいもや肉まんが発火する
- 金属を含む包装から火花が出る
- 発泡スチロールや樹脂容器が変形・焼損する
- 庫内の食品かすや油汚れが燃える
「少し長めに温めるだけ」「殻をむいた卵だから大丈夫」という思い込みが、大きな事故につながることがあります。
結論:電子レンジの「爆発」には3つのタイプがある
一般に「電子レンジが爆発した」と表現される事故の多くは、電子レンジ本体そのものが爆発しているわけではありません。
主に起きているのは、次の3種類です。
食品や容器が破裂する
卵、栗、密閉容器などの内部で蒸気が発生し、逃げ場を失った圧力によって破裂します。
加熱中ではなく、電子レンジから取り出した後、箸やフォークを刺した瞬間に破裂することもあります。
液体が突然噴き出す「突沸」
牛乳、コーヒー、味噌汁、スープなどが、見た目には静かなまま過熱状態になり、容器を動かしたりスプーンを入れたりした瞬間に激しく沸騰する現象です。
熱い液体が顔や手に飛び、やけどを負う危険があります。
食品や容器が発火する
食品を長時間加熱すると水分が失われ、炭のような状態になります。
さらに加熱が続くと火花が発生し、食品や容器、包装へ火が燃え移ることがあります。
実際に起きた電子レンジの事故例
電子レンジ事故は、特殊な使い方だけで発生しているわけではありません。
冷凍食品や総菜、さつまいも、飲み物など、日常的に温める食品でも事故が起きています。
事故例1:冷凍ピラフの袋の端が燃えた
2025年8月、冷凍食品のピラフを電子レンジで温めていたところ、袋の端が燃え出したという相談が寄せられています。
すぐに消したため大きな事故には至りませんでしたが、冷凍食品は商品によって加熱方法が異なります。
- 袋のまま温められるもの
- 袋から取り出して皿へ移すもの
- 袋に切れ目を入れるもの
- 指定された面を上にするもの
- 自動加熱を使用できないもの
「以前、似た商品を袋のまま温められた」という経験だけで判断せず、商品ごとの表示を確認してください。
事故例2:さつまいもの加熱しすぎで発火
2025年4月、さつまいもを電子レンジで加熱しすぎたことで発火したという相談が寄せられています。
使用者は扉を開けずに鎮火を待ったため、焦げたのはさつまいもだけでした。
さつまいもなどの水分が少ない根菜類は、長時間加熱すると水分が蒸発し、炭化が進みます。
国民生活センターが約100gのさつまいもを500Wで加熱した再現テストでは、約8分で煙が出始め、約11分で火花をきっかけに爆発的に発火し、庫内の圧力で扉が開きました。
これは実験条件での結果であり、「8分以内なら安全」という意味ではありません。
食品の大きさ、水分量、温度、電子レンジの出力などによって、発火までの時間は変わります。
事故例3:レトルト食品を表示どおりに温めず発火
2024年12月、レトルト食品をパッケージに表示された方法どおりに温めなかったところ、電子レンジの庫内で発火したという相談が寄せられています。
レトルト食品の袋には、アルミを使用した電子レンジ非対応のものがあります。
また、電子レンジ対応の商品でも、外袋から取り出す、指定された面を上にする、蒸気口を作るなど、商品ごとに使い方が異なります。
「レトルト食品はすべて電子レンジで温められる」と考えるのは危険です。必ず袋の表示を確認してください。
事故例4:ゆで卵調理器を使ったが卵が破裂
2024年8月、電子レンジでゆで卵を作る調理器を使用したところ、卵が庫内で破裂し、電子レンジが壊れたという相談が寄せられています。
電子レンジ用として販売されている専用調理器でも、部品の取り付け方、水の量、卵の個数、出力、加熱時間を間違えると危険です。
製品独自の説明書を確認し、自己判断で加熱時間を延長しないことが重要です。
事故例5:とろみのあるスープが庫内で破裂
2024年7月、とろみのあるスープなどを電子レンジで温めると、庫内で爆発するという相談が寄せられています。
カレー、シチュー、あんかけ、ポタージュなど、とろみや油分のある食品は熱が内部にこもりやすく、突沸や加熱むらが起こる可能性があります。
一度に長時間加熱せず、途中でよく混ぜてください。
事故例6:あんまんを温めていたら突然発火
2024年1月、あんまんを電子レンジで温めていたところ、突然発火したという相談が寄せられています。
肉まんやあんまんは、加熱しすぎると皮や中身の水分が失われ、炭化して発火することがあります。
NITEの再現実験でも、肉まんを長時間加熱したことでスパークが起こり、発火する様子が確認されています。
特に油分を含む食品は、加熱しすぎると爆発的に燃焼するおそれがあります。
事故例7:味噌汁が突然噴き出してやけど
シリコン容器に味噌汁を入れ、電子レンジの自動加熱を使用。
加熱後に別の器へ移そうとしたところ、蓋と一緒に熱い味噌汁が飛び出し、手にやけどを負った事例が報告されています。
使用した電子レンジの取扱説明書には、汁物は突沸の危険があるため、自動で温めないよう記載されていました。
卵は加熱中だけでなく、取り出した後にも破裂する
冷蔵庫に入れていたゆで卵を、電子レンジで少しだけ温める。
加熱中には何も起きなかったため、取り出して箸やフォークを刺した瞬間、卵が破裂することがあります。
卵の内部には水分が含まれています。電子レンジで加熱すると内部の水分が熱せられますが、殻や白身、薄い膜によって蒸気が逃げにくくなります。
その結果、内部の圧力が高まり、突然破裂します。
卵が含まれる食品にも注意
- ゆで卵
- おでんの卵
- 煮卵
- うずらの卵
- 目玉焼き
- スコッチエッグ
- 卵が丸ごと入った総菜
殻をむいてあっても、卵を丸ごと電子レンジで温めるのは危険です。
誤って加熱した場合は、すぐに触ったり、箸を刺したりせず、十分に冷めるまで近づかないでください。
コーヒーや味噌汁が突然噴き出す「突沸」
突沸とは、液体が沸点を超えても見た目には静かな状態が続き、振動や刺激が加わった瞬間に激しく沸騰する現象です。
国民生活センターの再現テストでは、約150mLのコーヒーを1000Wで加熱したところ、約1分50秒で爆発的に噴き出しました。
また、加熱後に一度沸騰が落ち着いた水へスプーンを入れると、その刺激によって再び大きく泡立つ現象も確認されています。
突沸に注意したいのは、次のような飲み物や食品です。
- コーヒー
- 牛乳・豆乳
- お茶
- 水
- 味噌汁
- スープ
- カレー・シチュー
- 油分やとろみの多い食品
汁物や飲み物を温めるときのポイント
- 加熱前によくかき混ぜる
- 一度に長時間加熱しない
- 飲み物専用モードがあれば使用する
- 自動加熱が使えるか説明書を確認する
- 加熱後すぐに容器を動かさない
- 加熱しすぎた場合は1~2分ほど静かに置く
- 取り出すときに顔を近づけない
発泡スチロール容器は変形し、燃え移ることもある
肉や魚、総菜などが入っている白い食品トレーには、発泡ポリスチレン製のものがあります。
食品が入っていた容器だから、そのまま電子レンジで温められると思うかもしれません。
しかし、発泡スチレンシート工業会は、PSP製食品容器について、基本的には電子レンジで使用できないと案内しています。
「電子レンジ使用可」と表示された一部の耐熱容器を除き、別の耐熱皿へ移す必要があります。
発泡スチロール製の容器は、食品の熱や油によって次のような状態になることがあります。
- 縮む
- ゆがむ
- 溶ける
- 穴があく
- 食品や油が庫内へこぼれる
- 発火した食品から火が燃え移る
国民生活センターの集計でも、電子レンジ事故のうち「樹脂トレイ」に関する相談が5件確認されています。
発泡スチロール自体がマイクロ波だけで必ず発火するわけではありません。しかし、容器は可燃物です。食品の過加熱や火花が起きれば、容器へ燃え移る可能性があります。
実際にトレイと食品袋が焼けた火災
NITEには、電子レンジの庫内で、トレイと食品を入れた袋が焼損した火災が報告されています。
原因は、食品袋を閉じる金属製の止め具を付けたまま加熱したことでした。
止め具の先端へマイクロ波が集中して火花が発生し、周囲の可燃物へ引火したと判断されています。
発泡スチロール製トレーに限らず、プラスチック容器や食品袋が入っている場合は、金属製の留め具、アルミ袋、脱酸素剤などが残っていないか確認してください。
迷った場合は、発泡スチロールや購入時のトレーから食品を取り出し、「電子レンジ使用可」と表示された耐熱容器へ移しましょう。
金属やアルミを含む包装は火花の原因になる
金属はマイクロ波を反射するため、形状や置き方によって放電や火花が発生することがあります。
温める前に、次のものが入っていないか確認してください。
- アルミホイル
- アルミ製のレトルト袋
- 調味料のアルミ小袋
- 金属製のスプーンやフォーク
- 針金入りの留め具
- 金や銀の模様が付いた食器
- 金属製の弁当カップ
- 脱酸素剤
- 電子体温計や乾電池
国民生活センターの再現テストでは、電子体温計を500Wで加熱したところ、加熱直後から火花が出て発煙・発火し、庫内がすすで汚れました。
子どもが体温計を入れたり、発酵温度を確認するため温度計を入れたままレンジ機能を動かしたりした事例も報告されています。
密閉容器や皮・膜のある食品も破裂する
蓋を完全に閉じた保存容器や密閉された瓶を加熱すると、内部で発生した蒸気の逃げ場がなくなります。
圧力が高まると、蓋が勢いよく飛んだり、容器が変形・破損したりする可能性があります。
また、殻や皮、薄い膜に覆われた食品も注意が必要です。
- 栗
- ぎんなん
- ソーセージ
- たらこ・明太子
- イカ
- トマト
- 殻や膜のある食品
食品によっては切れ目を入れるなどの下処理が必要ですが、具体的な方法は食品の表示と電子レンジの取扱説明書に従ってください。
少量の冷凍野菜でも火花が出る場合がある
金属を入れていないのに、冷凍ブロッコリーやミックスベジタブルから「パチパチ」という音や火花が出ることがあります。
食品の尖った部分や細い部分へマイクロ波が集中し、局所的に焦げや火花が発生することが原因のひとつです。
国民生活センターの再現テストでは、少量の冷凍ブロッコリーを550Wで2分30秒加熱したところ、わずかな火花と焦げが確認されました。
少量の食品、特に100g未満を高出力で加熱するときは注意が必要です。
- 少量だけを高出力で加熱しない
- 水を少し加える
- ラップをかける
- 低めの出力で加熱する
- 短時間ずつ様子を見る
庫内の汚れが突然燃えることもある
正しい食品を正しい時間で温めていても、電子レンジの庫内が汚れていると発火することがあります。
庫内に付着した油や食品かすは、繰り返し加熱されることで乾燥・炭化します。
特にマイクロ波の出口カバー付近に汚れが付着していると、マイクロ波が集中し、激しい火花や発火が起こる可能性があります。
国民生活センターの再現テストでも、汚れを付着させた電子レンジを使用すると、加熱開始直後から「バリバリ」という異音とともに激しい火花が発生しました。
定期的に確認したい場所は次のとおりです。
- 庫内の天井
- 庫内の側面や奥
- 扉の内側
- ターンテーブルの下
- マイクロ波の出口カバー
- 食品が吹きこぼれた部分
清掃は電源を切り、本体が冷えてから、使用機種の取扱説明書に従って行ってください。
電子レンジで危険になりやすい食品と容器
| 食品・容器 | 主な危険 | 注意点 |
|---|---|---|
| 生卵・ゆで卵 | 内部圧力による破裂 | 殻をむいていても丸ごと加熱しない |
| 栗・ぎんなん | 殻の内部に圧力がたまる | 適切な下処理と加熱方法を確認する |
| 味噌汁・コーヒー・牛乳 | 突沸によるやけど | よく混ぜ、短時間ずつ加熱する |
| カレー・シチュー | 突沸、加熱むら | 途中で混ぜ、加熱後すぐ動かさない |
| さつまいも・パン | 乾燥、炭化、発火 | 長時間加熱せず様子を見る |
| 肉まん・あんまん | 過加熱による発火 | 表示された時間を守る |
| 発泡スチロール容器 | 変形、溶解、穴あき、延焼 | 使用可表示がなければ耐熱皿へ移す |
| 密閉容器 | 圧力上昇による破裂 | 蓋や栓を外し、蒸気を逃がす |
| アルミ・金属類 | 火花、発火、故障 | 原則として電子レンジに入れない |
電子レンジ事故を防ぐ8つのポイント
1.パッケージの加熱方法を確認する
袋のまま加熱できるか、皿へ移す必要があるか、ラップが必要かを確認します。
2.ワット数と加熱時間を守る
500Wと600Wでは加熱時間が異なります。電子レンジの設定と商品の表示を照らし合わせてください。
3.追加加熱は短時間ずつ行う
中が冷たい場合でも、一度に数分追加せず、10~20秒程度ずつ状態を確認します。
4.卵や密閉容器をそのまま温めない
卵は殻をむいてあっても丸ごと加熱せず、密閉容器は蓋や蒸気口を開けます。
5.金属や付属品を取り除く
調味料の小袋、アルミ袋、脱酸素剤、金属製の留め具などが残っていないか確認します。
6.発泡スチロールや購入時のトレーから移す
電子レンジ使用可の表示がない容器は、耐熱皿へ移してください。
7.加熱中はその場を離れない
煙、異臭、異音、火花にすぐ気付けるよう、加熱中は電子レンジの近くにいましょう。
8.庫内をこまめに掃除する
食品かすや油汚れを放置せず、電子レンジが冷えてから拭き取ります。
電子レンジから煙や火が出たときの対処法
電子レンジの中から煙や炎が見えると、すぐに扉を開けて食品を取り出したくなるかもしれません。
しかし、扉を開けると庫内へ酸素が入り、炎が急激に大きくなる可能性があります。
煙や火が出ても、すぐに電子レンジの扉を開けないでください。
発煙・発火したときの基本行動
- 扉を閉めたまま運転を停止する
- 安全にできる場合は電源プラグを抜く
- 扉を開けず、電子レンジから離れる
- 119番へ通報する
- 危険を感じたら消火より避難を優先する
札幌市消防局は、電子レンジが発火した場合、扉を開けずに電源プラグを抜き、119番へ通報するよう案内しています。
水をかけると扉のガラスが割れ、けがをするおそれがあります。火が大きい場合や煙が充満している場合は、無理に消火せず避難してください。
一度発火した電子レンジは、そのまま使わない
火や煙が収まり、外見に異常がないように見えても、内部の配線や部品、扉、マイクロ波の出口などが損傷している可能性があります。
火花、発煙、発火、強い焦げ臭さがあった電子レンジは、自己判断で再使用しないでください。
電源プラグを抜き、メーカー、販売店、修理窓口などへ相談しましょう。
まとめ
電子レンジの事故は、本体が突然爆発するというより、食品や容器の破裂、液体の突沸、食品の過加熱による発火として起きるケースが多くあります。
特に注意したいのは、次のようなものです。
- 生卵やゆで卵
- 味噌汁、牛乳、コーヒーなどの液体
- さつまいも、パン、肉まん、あんまん
- 密閉された容器
- 発泡スチロールや電子レンジ非対応のトレー
- アルミや金属を含む包装
- 少量の冷凍野菜
- 庫内に付着した油や食品かす
電子レンジは正しく使えば便利な家電です。
しかし、「少しくらい長く温めても大丈夫」「紙や発泡スチロールだから問題ない」「加熱が終わったから安全」という思い込みが、事故につながります。
加熱時間を守る。容器と包装を確認する。加熱中は目を離さない。火が出ても扉を開けない。
この4つを、家族全員で共有しておきましょう。
参考情報
- 国民生活センター「電子レンジによる事故を防止!使い方を再チェックしませんか?」
- NITE「電子レンジで発生する事故」
- NITE「肉まんを加熱し過ぎて発火」
- 消費者庁「新生活で起こりやすい事故」
- 発泡スチレンシート工業会「PSP製食品容器の取扱い上の注意」
- 札幌市消防局「電子レンジからの出火にご注意を!」
※食品や容器の使用可否、適切な加熱時間は製品によって異なります。食品パッケージ、容器の表示、使用する電子レンジの取扱説明書を確認してください。


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