熱中症は、外だけで起きるものではない
熱中症と聞くと、炎天下のスポーツ、屋外作業、真昼の道路などを想像する人が多いかもしれません。しかし実際には、家の中でも熱中症は起きます。
消防庁によると、2025年7月に熱中症で救急搬送された3万9,375人のうち、最も多い発生場所は「住居」で、1万6,110人、全体の40.9%でした。道路や屋外よりも、家の中で搬送された人の方が多かったのです。
「家にいるから大丈夫」という考えそのものが、室内熱中症の危険を見逃す原因になることがあります。
なぜ家の中で熱中症になるのか
夏の室内は、外からの日差し、屋根や壁にたまった熱、高い湿度、風通しの悪さによって、少しずつ暑くなっていきます。特に西日が入る部屋、最上階、閉め切った部屋、キッチン、寝室などは注意が必要です。
さらに怖いのは、室温が急激に上がるとは限らないことです。テレビを見る。昼寝をする。料理をする。いつもの生活をしている間に、少しずつ体に熱がたまり、水分も失われていきます。
気付いたときには、頭痛、吐き気、強いだるさ、めまいなどが出ていることもあります。
「暑いけど、まだ我慢できる」が危ない
エアコン代がもったいない。冷房が苦手。体が冷えるのが嫌い。昔はエアコンなしでも平気だった。こうした理由から、暑くても冷房を使わずに我慢する人は少なくありません。
しかし、熱中症を防ぐために重要なのは、どこまで我慢できるかではなく、体に熱がたまっていないかです。環境省も、屋内ではエアコンなどを適切に使い、涼しい環境で過ごすよう呼びかけています。
「まだ耐えられる」という感覚と、「体が安全な状態」は同じではありません。
特に高齢者は、自分で暑さに気付きにくいことがある
室内熱中症で特に注意したいのが高齢者です。高齢になると、暑さや喉の渇きを感じにくくなり、脱水にもなりやすくなります。そのため、本人が「暑くない」「喉も渇いていない」と言っていても、安心とは限りません。
環境省は、高齢者について、気付かないうちに室温が高くなっている可能性があるため、感覚だけに頼らず、温湿度計で室内環境を確認するよう勧めています。
本人が暑いと言っていないから大丈夫、という判断も危険です。
こんな部屋は特に注意
西日が強く入る部屋、最上階の部屋、風通しの悪い寝室、エアコンのない部屋、料理中のキッチン、閉め切った部屋は、室温が上がりやすくなります。
また、エアコンを使っていても安心しきってはいけません。部屋の広さや構造、エアコンの位置によって温度むらができることがあり、自分がいる場所だけ暑いということもあります。
エアコンの設定温度ではなく、実際に自分がいる場所の室温を見ることが大切です。
夜も危険。寝ている間に室温が上がることもある
日が沈んだから安心とは限りません。昼間に屋根や壁へ蓄えられた熱が残り、夜になっても部屋が暑いままになることがあります。
特に、寝るときにエアコンのタイマーを短時間で切ると、その後に室温が再び上昇することがあります。環境省の熱中症環境保健マニュアルでも、夜間はタイマーが切れた後に室温が非常に高くなることがあると注意しています。
寝ている間は、自分で暑さの異変に気付きにくい時間でもあります。
水を飲んでいるから大丈夫、でもない
もちろん、水分補給は大切です。しかし、室温が高いままの部屋で過ごし続ければ、水を飲んでいても体に熱がたまる可能性があります。
熱中症対策は、水分をとることと、暑さそのものを避けることの両方が基本です。室内でも、喉が渇く前からこまめに水分をとり、必要に応じてエアコンや扇風機を使います。
「水さえ飲めば、暑い部屋でも大丈夫」というわけではありません。
エアコンの「28℃」を勘違いしていない?
よく「エアコンは28℃に設定すればいい」と思われていますが、環境省が示す28℃は、あくまで室温の目安です。エアコンの設定温度を28℃にしても、実際の室温が必ず28℃になるとは限りません。
西日が強い、部屋が広い、断熱性が低い、人が多いなどの条件によっては、設定温度を下げる必要があります。
数字だけを守るのではなく、実際の室温と体調を見て調整することが重要です。
室内熱中症のサインを見逃さない
めまい、立ちくらみ、頭痛、吐き気、強いだるさ、大量の汗、逆に汗をかかなくなる、反応がおかしい、呼びかけへの返事がおかしい。こうした異変があれば、熱中症の可能性を考える必要があります。
まず涼しい場所へ移動し、服をゆるめ、首、脇の下、足の付け根などを冷やします。自分で水分を飲めない、意識がおかしい、呼びかけに反応しないなどの場合は、ためらわず救急要請が必要です。
「少し休めば治るだろう」と様子を見続けることが、危険な場合もあります。
室内熱中症を防ぐために最低限やること
暑い日はエアコンを我慢しない。温湿度計で実際の室温を確認する。喉が渇く前に水分をとる。カーテンやすだれで日差しを遮る。扇風機やサーキュレーターで空気を循環させる。夜も室温が上がりすぎないよう注意する。
そして、高齢者や子ども、一人暮らしの家族がいる場合には、「本人が大丈夫と言っているから」と任せきりにせず、室温や体調を確認することも大切です。
熱中症で救急搬送される場所として、住居は決して珍しい場所ではありません。
室内熱中症で怖いのは、炎天下のような分かりやすい危険がないことです。テレビを見ながら。昼寝をしながら。料理をしながら。いつもの家の中で、少しずつ体に熱がたまっていく。
「家の中だから大丈夫」ではなく、「家の中でも暑ければ危険」。この意識が、夏の重大事故を防ぐ第一歩です。
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